チューブアンプ用語集
知って役立つチューブアンプの使い方と用語集。
ギターアンプの歴史
簡単な ギターアンプの歴史 です。
1940年代後半~
エレクトリックギター発売当初のサウンドはクリーン主体であった為、オーディオアンプ同様、1つのボリュームしかありませんでした。
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その後、音楽の大音量化に伴いパワーのない出力の小さなアンプはボリュームを上げると歪んでしまい(当時は欠点だった)、アンプも歪まないように大型化されて行きます。
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1960年代中期~クラプトンの登場
小さなアンプを大音量でドライブさせていた米国のブルース・ギタリストの演奏を聴いてカッコイイじゃん!!といった若者達(エリック・クラプトンやジェフ・ベックなど)が英国にいました。
彼らは歪んだ音を出す為にアンプのボリュームを最大にし演奏し始めます。
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1970年代~メサ・ブギーの登場
歪んだ音が主流になり、既存のフェンダーアンプを歪むように改造していたランドール・スミスがメサ・ブギーを立ち上げます。
メサ・ブギーの特徴はマスターボリュームを付けたこと。
プリ(入力)部と、パワー(出力)部にボリュームを設け、プリ(Gain)を上げる事で小音量でも歪みを作ることが出来る画期的なものでした。
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1980年代~フェンダーからIIシリーズ登場
80年代に入ると本家フェンダーもアンプのデザインを見直します。
ランドール・スミス同様、70年代から既存のフェンダーアンプを改造していたポール・リヴェラ(後にリヴェラ社を設立)を招き、マスターボリュームを付け、スーパー・チャンプやチャンプII、多チャンネル仕様のデラックス・リバーブIIやプリンストンリバーブIIなどを発表します。
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~現在(エフェクトループ)
音楽はさらに多様化し、マスターボリューム以外に、外部エフェクターを繋ぐことも一般的になります。
特にアンプで歪ませる場合、ディレイなどの空間系エフェクターをギターアンプの前に繋ぐと音が濁ってしまいます。
そこで登場したのがエフェクトループ端子。
アンプの歪みの後ろに設けたこの端子により空間系エフェクターを効果的に使えるようになりました。
※厳密に言うとプリアンプの後ろでパワーアンプの前
最近は未使用時のエフェクトループ回路をバイパス出来るものも発売されています。
ギターアンプ用語集
コンボアンプ
コンボアンプとは、アンプ部とスピーカー部が一体になったアンプのこと。
小~中型アンプに多い。
ビルトインアンプとも呼ばれます。
スタックアンプ
Marshall 1959:
スタックアンプとは、マーシャルやメサブギーなどの大型アンプに多いタイプ。
アンプ部(ヘッド)とスピーカー(キャビネット)部が分かれているタイプ。
※接続には専用のスピーカーケーブルを使います。ギター用のシールドケーブルを使ってはいけません
ブティックアンプ
プリント基板全盛の時代に登場したアンプ『マッチレス』に代表される、ハンドメイド・アンプの総称。
プリント基板ではなく、昔ながらの手作業(ポイント・トゥー・ポイント、ハンドワイヤリング)で配線を行う為、劣化の少ない太い音が特徴ですが、作業効率が悪く非常に高価です。
A級(クラスA)、AB級
A級(クラスA):
5~15w程度の低出力の小型真空管アンプに採用される方式で、音の信号(+と-の波形)を1つの真空管で管理します。
パワー管は常に忙しく稼動状態にあるため、真空管は発熱しやすく大きな出力のアンプには向きませんが、A級/ クラスA アンプは、ピッキングに対するレスポンスが早く、ピッキングニュアンスを大切にするブルースギタリストなどに好まれる傾向にあります。
また、出力も小さくメンテンナンスも楽なので自宅練習用のアンプとしてもおすすめです。
AB級(クラスAB):
1つの真空管で信号を管理するA級に対し、AB級/B級は、+の波形と-の波形を別の2つの真空管で管理します。
そのため真空管の作業効率がよく、大きな出力のアンプに向いています。
音質はパワフルでロック向きですが、A級に比べ特に音質が劣るわけではありません。
現代のアンプの主流はAB級です。
ギターアンプの名称と機能の解説
コントロールパネル:
左から
- INPUT(インプット)
ギターを繋ぎます。 - Volume(ボリューム)
ノーマル時の入力レベルを上げます(主にプリ部で作用)上げると小音量でも歪みが得られます。GAINと表記される場合も。 - Boost(ブースト)
ブースト時の歪み量を調整します - Bass(ベース)
低域を調整します - Middle(ミドル)
中域を調整します - Treble(トレブル)
高域を調整します - Master(マスター)
ノーマル時の出力レベルを上げます(主にパワー部で作用)クリーン、または昔のアンプのようにパワー部をドライブさせたい場合はこちらを上げ、Volumeで音量を調整します。 - Foot Switch(フット・スイッチ)
フットスイッチを繋ぎます。フットスイッチによりノーマル/ブーストの切り替えや、リバーブのオン・オフなどが出来ます。 - Boost Master(ブースト・マスター)
ブースト時の出力レベルを上げます - Reverb(リバーブ)
リバーブ(エコー)を調整します - Presence(プレゼンス)
アンプ(パワー部)の最終的な高域を調整します - Power(パワー)
電源スイッチです。大きなアンプの場合メイン以外にスタンバイというスイッチがあります。
スタンバイ・スイッチ:
大きな出力のアンプには、電源以外に、スタンバイというスイッチがあります。
真空管は暖まらないと本来の性能が発揮されないため、このようなスイッチが設けられています。
Powerは真空管を暖めておくスイッチ 、 Stand Byはアンプに通電するスイッチです。
スタンバイ・スイッチの使い方;
電源を入れる = Power(30秒~1分程待って)On → Stand By On
電源を切る = Stand By Off → Power Off
シールドの抜き差しや、ちょっとした休憩 = Stand Byのみoff
ギター再開 = Stand Byをon
エフェクトループ端子(アンプ背面);
コーラスやディレイなど空間系エフェクターをつなぐのに便利な端子。
エフェクターは通常、ギター⇒エフェクター⇒アンプの順に繋ぎますが、アンプで歪みを作る場合に空間系エフェクターをここに繋いでしまうと綺麗な反響/残響音までもが汚く歪んでしまいます。
エフェクトループを利用すれば、プリアンプ部(歪みを作った後)を通過したあとの信号(パワーアンプ手前)にエフェクターをかけることが出来るのでCDなどで聴けるような綺麗なエフェクトをかけることが出来ます。
※厳密に言うと大音量下ではパワー部も歪みます
※ギター⇒エフェクター⇒アンプの接続が昔風で好きだという人もいるので必須というわけではありません
Pre Amp Out(Send):
エフェクターの入力に繋ぎます(センド)
Power Amp In(Return):
エフェクターの出力を繋ぎます(リターン)
※ここに接続出来るエフェクターは主にラックタイプのものになります。コンパクトタイプのエフェクターではインピーダンスの関係で使えない(音量が下がる)場合が殆どなので、使用するアンプ、エフェクターのマニュアルを良く読んで下さい。
アンプ背面;
1.プリアンプ用真空管:
入力された信号をパワーアンプに送れるレベルまで増幅します。
歪みの強い順に12AX7、12AT7、12AU7などがあり、基本同じものに交換します。
また、リバーブ回路や、エフェクトループ回路にも真空管を使用したモデルの場合、さらにプリ管が並ぶ事になります。
バイアス調整は必要ないのでご自分で交換可能です(交換は自己責任で、また感電の危険もありますのでゴム手袋を着用するなどの対策をして下さい)。
親指位の大きさ
2.パワーアンプ用真空管:
プリ・アンプからの信号をさらに大きくし、スピーカーに送ります。
アンプにより6V6、6L6、EL84、EL34などがあり、それぞれの管に互換性はありません。
写真は6V6x2。交換は2本、大型のアンプの場合4本同時に交換します。
フェンダー・チャンプなどパワー管が1本のものや、自己バイアス方式のアンプを除き、バイアス調整が絡んでくるので安易に交換しない方が良いでしょう。
3.スピーカー出力端子:
スピーカーの出力端子。写真のようにここがジャック式になっているアンプの場合、別の例えば口径の大きなスピーカー(キャビネット)に繋ぎ換えることも出来ます(インピーダンスΩが同じもの)。
また、アッテネーターも使えるようになるため、ここをジャック式に改造するのも定番です。
※チューブアンプの場合スピーカーを繋がずに音量を上げてしまうとアンプが壊れることがりますので注意して下さい。
バイアス調整とは?
出力の大きなアンプの場合2本または4本の管を使ってパワーを引き出します。
バイアス調整とは簡単に言うと、装着する2本または4本のパワー管の特性をアンプ側で適正値に合わせる作業のことです(プリ管にはバイアス調整は必要ありません)。
自己バイアスと固定バイアス:
アンプにより自己バイアス式(Cathode Bias)と、固定バイアス式(Fixed Bias)というものがあります。
自己バイアス式のアンプの場合、マッチングの取れたパワー管を挿すだけでOK(バイアス調整は不要)、固定バイアス式の場合は、パネル内部にあるバイアス用ポットによる調整が必要になります。
中にはバイアス調整用ポットのないモデル(例えば、フェンダー・ブルースJrやメサブギーなど)もあり、そういったアンプの場合、アンプに合わせたパワー管を挿すのが最も一般的な方法ですが、別途バイアス調整用ポットを取り付けるという改造も)。
いすれにせよ、高電圧がかかる危険な作業なので、調整は(自己バイアス方式以外のアンプは)専門のショップで行いましょう。
バイアス調整が良くわからない、面倒という方はこんな方法もあります。
バイアス調整のいらない真空管アンプ:
面倒なバイアス調整ですが、近年はバイアス調整を自動で調整、監視してくれるアンプも増えています。
HUGHES & KETTNER(ヒュース&ケトナー)のTSC (Tube Safety Control):
ドイツが誇る HUGHES & KETTNER(ヒュース&ケトナー)の近年のアンプには、パワー管を監視する、TSC (Tube Safety Control)が搭載されています。
TSCとは、真空管の寿命を延ばし、アンプ本体での自動バイアス調整、パワー管の異常をリアパネルのLEDで表示してくれるので非常に便利です。
➡HUGHES & KETTNER(ヒュース&ケトナー)アンプ 一覧へ
BUGERA ( ブゲラ ) IのNFINIUM シリーズ:
BEHRINGER(ベリンガー)の真空管アンプ・ブランド、BUGERA ( ブゲラ )のチューブアンプには、Infinium(インフィニウム・ヴァルブライフ・マルチプライヤー・テクノロジー)を採用。
真空管をモニタリングし常に最良の状態に調整し、真空管のパフォーマンスを最大限に生かすシステム(バイアス調整不要)。
LEDにより真空管の交換タイミングも教えてくれるようです。
SHINOS Luck 6V:
国産アンプメーカーSHINOS(シノズ)のLuck 6V(40w)はプレーヤー自身で簡単にバイアス調整が出来るようにデジタルメーターとバイアス調整ツマミが搭載されています。
プレーヤーはマッチングの取れたパワー管を買うだけで常に極上のアンプサウンドを得ることが可能です。
Victory Amps:
英国のアンプブランド Victory Amps/Victory Amplifiersのチューブアンプには、バイアス調整ポットがバックパネルに搭載されているためにテスターがあればバイアス調整が非常に簡単に出来るようになっています。
プリント基板方式か、ハンドワイヤリング方式か?
プリント基板方式とは、抵抗やコンデンサーなどの電子部品を、基板上にプリントされた薄い銅箔で繋ぐ方式のこと。
現在はこのプリント基板方式が主流です。
写真はエフェクターの基盤・Ibanez TS-9(プリント)
表
裏
ポイント・トゥー・ポイント方式とは、銅箔を使わずに、実線で繋ぐ方式の事を言います。
写真はIbanez TS808HW(ハンドワイヤリング)
表
裏
あまり綺麗ではないですね(^^;)
一般的に、ハンドワイヤリング(ポイント・トゥー・ポイント方式)方式は信号のロスが少なくクリアで、ハイ落ちがなく、音も太くなる言われていますがどうなのでしょう?
ギターに関していうと、内部配線を例えばベルデンなどの良質のものに交換すると音が太くなったりするので、薄い銅箔よりは実線を使ったポイント・トゥー・ポイントの方が良い気がしますが。
ただ、ハンドワイヤリングもプリント基板もアンプの個性ですからね、プリント基板のアンプをハンドワイヤリングして音の比較をしてみないことには何とも言えません。
もちろんワイヤリング方式の違いだけでなくスピーカーの選択も重要です。
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