スピーカーキャビネットの選び方ガイド|タイプや仕様の違いを解説

ギターアンプの音を最大限に引き出すには、スピーカーキャビネットの選択が重要です。本記事では、スピーカーキャビネットの種類から、許容入力、インピーダンス(Ω)など、スピーカーキャビネット選びに役立つポイントを分かりやすく解説します。
スピーカーキャビネットとは
スピーカーキャビネットとは、スピーカーを収めた箱のことで、「エンクロージャー」とも呼ばれます。キャビネットの構造は大きく分けて3つあり、それぞれ音質に特徴があります。
密閉型(クローズドバック)
スピーカーを完全に密閉した構造を持つタイプです。
特徴:
音がスピーカー正面方向に集中するため、指向性に優れています。キャビネットが大型の場合、特に低音が豊かで、スピーカー本来の特性をしっかり活かすことができます。密閉されているため、設置場所による音質の変化が少ないのも特徴です。
マーシャル1960など、大型キャビネットでよく採用されています。
後面開放型(オープンバック)
スピーカー背面が開放された構造を持つタイプです。
特徴:
スピーカー背面からの音も響きに影響するため、柔らかく広がりのある音が特徴です。設置場所によって音質が微妙に変化します。指向性は密閉型に比べて低めです。
真空管の放熱にも適し、フェンダーなどのコンボアンプに良く採用されています。
バスレフ型
密閉型のキャビネットに穴を空け、低域を効率よく使うためのユニットです。
特徴:
キャビネット内部の空気振動を活かして低域を強調します。ギターアンプではあまりみられませんが、ベースギター用キャビネットや、オーディオ用の小型スピーカーに採用されることが多いです。
ストレートかスラントか
マーシャルなどの4×12キャビネットには、「A」と「B」という2つの型番があります。代表的なモデル「1960シリーズ」を例に、その違いを見てみましょう。
Aは「Angled」、Bは「Base」の略です。
1960A(上):
1960Aは、上部スピーカーが斜めに付いている為、音が広がり、また音が遠くに飛ぶように設計されています。主にスタックキャビネットの上段に配置されます。
1960B(下):
1960Bは、スピーカーが全て垂直に配置され、スラントしていないデザインです。スラントされていない分、容積が大きく中低域が豊かといわれています。主にスタックキャビネットの下段に使用されます。
許容入力
スピーカーには許容入力というものがあります。許容入力とは『○○以上入力するとスピーカーが壊れますよ』という基準を示したもので、W(ワット)で表記されます。
ではここで問題です。
定格100Wの真空管アンプに、許容入力100Wのスピーカーは繋げるのでしょうか。
答えは「繋ぐことは可能ですが、ボリュームを上げると壊れる可能性があります」。
定格100Wということは、チューブアンプの場合の最大出力は倍の200W近くになります。
その為スピーカーの許容入力は200W程度のものを使用するか、ユニットを複数使用し、出力を分散(100Wの1960を2台 >2段→3段積みへ)させる必要があります。
※マーシャルの定番キャビネット「1960」には許容入力100Wのモデルや300Wなど搭載スピーカーにより色々と種類があります。特に、ヴィンテージスピーカーの載ったキャビネットは特に注意が必要です(許容ギリギリのサウンドが好きという方も多いですが)。
※シールドの抜き差しなどによる不用意なノイズにも注意が必要です。
インピーダンス(Ω)
スピーカーにはインピーダンス(抵抗)というものがあります。Ω(オーム)という単位で表され、アンプとスピーカーのインピーダンスは正しく合わせなくてはなりません。
インピーダンスを合わせないと、正常に音が再生されないばかりか、アンプやスピーカーの故障につながります。
▼マーシャル1960キャビネットのように、複数のインピーダンス設定(例:4Ω・16Ω(モノラル)、8Ω(ステレオ))が可能なモデルもあります。
スピーカーキャビネットを2台使用する場合
音質や音量、許容入力の問題等で スピーカーキャビネット を2台使用する場合にも注意が必要です。スピーカーキャビネットを2台使用する場合は「キャビネットの入力インピーダンスを、使用するキャビネットの数で割った値で出力する」という公式があります。
キャビネットの入力インピーダンス ÷ 使用するキャビネットの台数 = アンプの出力インピーダンス
- 16Ωキャビネットを2台使用する場合、16 ÷ 2 = 8Ω → アンプ側の出力を8Ωに設定します。
- 8Ωキャビネットを2台使用する場合、8 ÷ 2 = 4Ω → アンプ側の出力を4Ωに設定します。
接続方法はパラレル(並列接続)が一般的です。多くのアンプやキャビネットにはパラレル用の端子が搭載されていますので、マニュアルをよく確認してください。
自分のアンプ(8Ω)をスタジオにあるマーシャル製キャビネット(16Ω)に繋げますか?
通常はアンプとスピーカーキャビネットのインピーダンスは合わせる必要がありますが、8Ωと16Ωなど一致しない場合はどうすればよいかですが、問題ない場合とNGな場合があります。
アンプ側のインピーダンスよりスピーカーのインピーダンスが高い場合(例:8Ω⇒16Ω):
- 接続は可能ですが、音量が低下します。音質やダイナミクスに影響が出る場合があります。
アンプ側のインピーダンスよりスピーカーのインピーダンスが低い場合(例:8Ω⇒4Ω)
- 接続するとアンプに過負荷がかかり、故障の原因となりますので避けましょう。
参考情報:
複数のスピーカーを組み合わせる場合、スピーカー内部の配線(並列・直列)を変えることでインピーダンスを変化されることもできます。
※エミネンスのサイト Eminence Speaker – Wiring Diagrams より引用~
その他のポイント
スピーカーキャビネットの大きさや形状
スピーカーキャビネットの大きさや形状は、音質に大きく影響します。マーシャルのキャビネットで例えると、1960AXよりも1960TV(TALL VINTAGE)の方が65mm高く、より豊かな低域を得られる設計となっています。


スピーカーの口径
スピーカーの口径は、音量と低域に関わる重要な要素です。一般的に、ギターアンプには8インチ~12インチのスピーカーが使用されますが、スピーカーの口径が大きい方が、音が大きく低域も豊かになります。
スピーカの数
スピーカの本数を増やすことで低域が出るようになります。2×12(12インチ2発)より、4×12(12インチ4発)の方が、より低域が得られます。
マグネットの大きさと特性
同じスピーカーなら、許容入力の(マグネットの大きな)スピーカーのほうがパワフルになります。ただし高域特性は悪化するので、大きくパワフルなものが必ずしも良いとは限りません。

スピーカーのマグネット
スピーカーに使われているマグネットでも音は変わります。マグネットは主に アルニコ(アルミニウム、ニッケル、コバルトの合金の略)、セラミック(フェライト)、ネオジウムがあります。
アルニコ
セラミックが開発される以前によく使われていたマグネットです。中低域が豊かなヴィンテージ・サウンドが特徴です。許容入力が低いものも多いので注意が必要です。
主なブランド:
JENSEN Pシリーズ
CELESTION Blue、GOLDシリーズなど
セラミック(フェライト)
1960年代に開発されたマグネットで、よりクリアでヌケの良いサウンドが特徴です。パワフルなものが多いです。
主なブランド:
JENSEN Cシリーズ
CELESTION G12、Vintage 30など
ネオジウム
近年開発されたマグネットで、非常に強力な磁力を持っています。そのため、マグネットを小さく出来(軽量)、かつハイパワーであり、許容入力も100W以上のものも多数あります。
持ち運ぶことの多いライブ用のアンプのスピーカーにおすすめです。
主なブランド:
CELESTION G12 Century Vintage、Neo Creambackなど
色々特徴があるので、キャビネットを選ぶ際には搭載スピーカーを調べることも重要です。
スピーカーケーブルの選び方と注意点
チューブアンプを使用する際は、必ずスピーカー専用ケーブルを使用しましょう。ギター用のシールドケーブルと似ていますが、シールドケーブルは高電流に対応した設計にはなっていないため、場合によっては破損や火災の原因になります。
BELDEN 9497
スピーカーケーブルは、BELDEN(ベルデン)の9497が定番です。
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